古典ミステリーの傑作 エラリー・クイーン『Xの悲劇』

こんにちは! 物語屋のひっひーです。今回はミステリーの巨匠エラリー・クイーンの傑作ミステリー『Xの悲劇』を紹介します!

海外ミステリーといえば、誰を思い浮かべますか?

ミステリーの女王・アガサ・クリスティー、本格派のヴァン・ダイン、江戸川乱歩のペンネームの下になったエドガー・アラン・ポーなど、ミステリーを普段読まない人でも一度は耳にしたことがあるような名前が上がります。

その中には当然エラリー・クイーンも入ってくるでしょう。古典ミステリーという分類で、いいえ、現代の小説家を見ても、エラリー・クイーンという作家は異質です。

なぜか。

それはエラリー・クイーンという作家は実は二人で一人だからです。

どういうこと?

一言で言えば、共著になるでしょうか。ただ、一般に共著という場合、それぞれ誰がどこを担当したのか、あるいは数名の作家の短編がいくつも収録されているようなことを言うと思いますが、エラリー・クイーンという作家は二人で一遍の物語を考え、書いているんです。

つまり……

二人の天才が一遍の傑作を綴っているということです!

しかも『Xの悲劇』に始まる「ドルリー・レーン」シリーズはバーナビー・ロス名義で発表されていたり……。

本当に、細かいことを書いているとキリがないくらい、語りがいのある作家ですが、本題はストーリーです。

「ドルリー・レーン」シリーズは軒並み傑作揃いですが、その幕開けを告げた衝撃のシリーズ第一作『Xの悲劇』を紹介していきます!


あらすじ

まずは表紙を開いた1ページ目に掲載されているあらすじを引用します。

聴力を失い引退した名優ドルリー・レーンは新聞記事だけを手がかりに、ある難事件の真相を看破した。その鋭敏な頭脳を頼り、ブルーノ地方検事とサム警視はニューヨークの路面電車で起きた殺人事件への捜査協力を依頼する。その殺人では、毒針が刺さったコルク球という前代未聞の凶器が使われていた。あまりにも多い容疑者の中から、ただひとりの犯人Xを指し示すべく、名探偵は推理と俳優技術のかぎりを尽くす。

耳の聞こえない探偵、俳優が探偵役というかなり特殊な設定ですが、作中ではその設定を活かした粋な演出なんかもありますし、レーンならではの捜査方法なんかも出て来て、次はどうなるのか、どんなことをしてくれるのかと、ミステリーとは別の楽しみ方もできるようになっています!

さて、そんな『Xの悲劇』ですが、作中では三つの殺人事件が発生します。その事件について、見ていきたいと思います。

ネタバレ? 当然しません。

今回事件の概要を皆さんに紹介しようと思ったのは、三つの事件を知ってもネタバレにならないのはもちろん、三つの事件を知っても絶対に犯人を推理することは不可能だからです! これはもう断言できます!

すべては衝撃の結末に向かうお膳立てなんです! ネタバレを疑うことなく、次の章をご覧ください!

衝撃の真相解明に繋がる三つの殺人事件

第一の事件は、あらすじにもある路面電車の中で起きた殺人事件です。これがまたとんでもない事件で、トリックを使った毒殺方法は科学的に不可能と今ではされているようですが、そんなことは無視して、事件の真相を追ってくださいね。

被害者は株式仲買人のハーリー・ロングストリートという男性で、チェリー・ブラウンというミュージカル女優との結婚を控えていました。ハーリーは友人がホテルに集まると、自分の家にディナーを用意してあると言い、皆を招待します。

ホテルから自宅に向かういつも使っている時間の電車の中で事件は起きます。

電車の中は満員。その中でハーリーがポケットに手を突っ込んだ時、突然よろめき、死んでしまいます。

ポケットにはコルク球に無数の針が刺さった特殊な凶器が入っていて、そのすべての針先にニコチンが染み込まされていて、ハーリーはその毒針によって絶命したのです。

コルク球は、何者かが満員電車に乗じてハーリーのポケットに仕込んだと思われます。

車掌のチャールズ・ウッドは速やかに対応し、警察が到着するまで乗客を一人も逃がしませんでした。つまり、犯人はまだ電車の中にいるのです。

そこから一人一人、尋問や手荷物検査が行われますが、犯人は割り出せず……。

その後様々な証言からハーリーが多くの人間に恨まれていたことがわかってきます。

共同経営者のジョン・O・デヴィット、デヴィット夫人、婚約者のチェリー・ブラウン、ハーリーに唆された投資で大失敗したマイケル・コリンズ、ハーリーの秘書アンナ・プラット……。

その中で特に動機が強いと見られるマイケル・コリンズをサム警視は最重要人物として目をつけます。

そんな中、ハーリー殺害事件の犯人に心当たりがあるという人物からブルーノ地方検事に手紙が届きます。その手紙には船の待合室で密会したいと書いてあり、警察は船に潜入捜査を行います。また、その知らせを受けたレーンも船へと足を運びます。

ですがそこに手紙の差出人は現れず、それどころか殺人事件が発生します。その被害者は気を失った後船から突き落とされ、隣の船との間に落ちてしまったがために顔が潰れていました。ですが衣服と身体的な特徴からそれが車掌チャールズ・ウッドだと判明します。

手紙の差出人はチャールズ・ウッドだったのではないか。ウッドは犯人を知っていたために口封じで殺されたのではないかと考えられます。つまり、犯人は同じ船に乗っていたわけです。

その船にはジョン・O・デヴィッドが乗っていました。そのためデヴィッドは逮捕され、起訴されます。

ですがデヴィッドが無実であることをレーンが証明し、裁判は逆転無罪に。

その帰り道、デヴィッドが誰もいない貨物車で射殺されます。そのデヴィッドが残したダイイング・メッセージが人差し指と中指を交差させて作った「X」の形でした。

その四日後、ドルリー・レーンによってすべての真相が明かされるのです。

これだけ事件のことを書いても、おそらく最後まで読まなければ犯人、真相はわかりません。すべてが明かされた時、きっと全身に衝撃が走ると思います。

古典ミステリーの傑作を、ぜひ手に取って読んでくださいね!


おわりに

最後まで読んでいただきありがとうございました!

トリック、大量の容疑者、元俳優の探偵、連続殺人、大どんでん返しによる衝撃の結末。

まさに古典ミステリーを代表する、今なお色褪せない不朽の名作です。読まない選択肢はありません!

特に最後の被害者デヴィッドが遺したダイイング・メッセージの謎を推理してみてください! 『Xの悲劇』で犯人を見破ることができたなら、あなたは名探偵の素質があるのかもしれません。

以下に「ドルリー・レーン」シリーズをすべて掲載しておきますので、興味のある方はぜひ!



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