こんにちは! 物語屋のひっひーです。今回はミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』についてご紹介します。
『ラ・ラ・ランド』というタイトルは誰しも耳にしたことがあるはずです。何だか楽しそうな題名だなあと思うはずです。まさにその通り、本当に楽しいミュージカル映画なんです。
ミュージカルといえばやはり何といっても観客をわくわくさせる幕開け。どのミュージカルを観てもその物語の象徴だったり代名詞といえる名ナンバーに導かれ、一気にその世界に引き込まれます。
その中でも、観客をわくわくさせる冒頭という点で『ラ・ラ・ランド』は群を抜いていると言っていいでしょう。思わず体がリズムに乗ってしまう音楽、夢と希望に満ち溢れた歌詞、大勢でのリズミカルなダンス。
冒頭十分だけでも観る価値があります。そして十分観れば、あとはそのまま二時間『ラ・ラ・ランド』の世界に浸るだけです。
実は僕は数年前に一度『ラ・ラ・ランド』を観て「よくわからない」と思ったのですが、最近改めて鑑賞するとこんなに素敵なお話だったのか! と気づくことができました。
特に結末に関しては「えっ、そうなるの? それでいいの?」となる人も多いかもしれませんが、僕は改めて鑑賞して、これでいいのだと思えました。その辺りについても触れたいと思っています。
あらすじ
ハリウッドのお膝元、ロサンゼルス。女優を目指すミアは映画スタジオのカフェで働きながらその夢を目指していました。ですが何度オーディションを受けても結果は出ません。
そんなある日、ミアはとある店で一人のピアニストの演奏に魅せられます。彼はセブというジャズ・ピアニストでした。ところがセブはまさにその時、クリスマスにも関わらず店をクビになってしまいます。セブには大好きなジャズを思う存分演奏できる自分の店を持ちたいという夢がありました。
二人は様々な場所で何度も会います。お互い嫌味を言い、罵り合う中でそれぞれの夢を尊重し、応援し合ううちに恋に落ちます。
ところがセブが店の資金集めのために参加したバンドが成功したことで、二人はすれ違い始めます。セブは自身の夢を後回しにして、バンドのツアーに参加しようとするのです。ミアは店を開く夢を諦め、目の前の成功を追うのかとセブを責めます。あなたの本当の望みはバンドのメンバーとして音楽を演奏することではないはずだ、と。
二人は距離を取ることにしますが、その後セブの元に一本の電話が入り、それはミアがセブの勧めで上演した一人芝居を観たという演出家から今度撮影する映画のオーディションに参加してほしいという内容のものでした。
セブはミアの元に駆けつけ、オーディションに参加するよう言いますが、ミアは大学に戻ろうと思うと言って夢を諦めようとしています。六年間努力して何にもならなかった、と。セブはただ一言、明朝八時半に迎えに来ると言い、帰宅します。
翌朝、ミアはオーディションに参加しました。その帰り道、二人の思い出の場所で、セブは「必ず合格する」と断言します。何となくわかるのだ、と。映画の撮影はパリの予定でした。それも脚本を同時並行で作っていくため、撮影期間は短くても三ヶ月。ミアは合格するわけがないと思いつつも、心は揺れていました。
セブはミアの夢を後押しするため、距離を取ることにします。ミアはパリへ、自身は開店資金を集めるため、バンドのツアーへ。
そして五年が経ち、お互いに夢を叶えた二人は運命に導かれるように思わぬところで再会するのですが、ミアは別の男性と結婚して幸せな家庭を築いていて……。
彼女を待ち続けていたセブはジャズ・コンサートのMCとしてただ一言「ようこそ」と口にして、かつてミアを魅了した音楽を独奏します。
そして二人が思い描いていた理想の未来が描き出され……。
甘い恋、切ない別れ、夢を追う人々の希望が詰まった傑作ミュージカルです!
夢を追った二人の人生
僕が初めて『ラ・ラ・ランド』を観た時、「え?」となったのは、その結末でした。結局結ばれへんのんかい! と。そこで困惑してしまったため、その後描き出される二人の「理想だった」未来が何のこっちゃわからなくなっていたのです。
ですが改めてじっくり観ると、これは失恋を描いたのではなくて、夢を追った二人の、それぞれの人生を描いたものの結末だったのだと気づきました。
「夢とあたしどっちが大事なの!?」
この答えようのない究極の詰問をお互いが提示している。それがミアとセブの関係性です。だからこそ二人はそれぞれの夢を追い、成功しました。距離を置く時はもちろん辛いですが、それぞれが夢を追う立場だったからこそ、二人の別れを二人は受け入れることができたわけです。
要するに、「夢とあたしどっちが大事なの!?/仕事とあたしどっちが大事なの?」という詰問は一方通行の時に初めて人間を締めつけるのであって、大きな夢を求めるミアとセブには何の効力も持たないということです。この質問を彼らが口にすれば、答えは一つしかありません。
「お互い、夢を追おう」
おそらく、共働きの夫婦だと「仕事とあたし(俺)どっちが大事なの?」という質問は出ないでしょう。(子供のいない家庭に限りますが)
結局何が言いたいかというと、二人は恋破れたわけではなく、お互いの成功のために別れを選んだのです。
ただ二人の恋の切ないところは、セブが彼女を待ち続けていたという点です。これもあるあるではないでしょうか。
お互いのために一度距離を取る。再会した時、彼女は他の誰かと結ばれていて、長年一途に待ち続けていたのは男のほうだけだった……。
『ラ・ラ・ランド』の場合、別れから五年が経って二人は再会します。その間にミアはハリウッドのスターに上り詰めています。セブを忘れて別の男性と結婚していてもおかしくありませんし、これでミアを責めることはできません。
ただ再会を果たした時の彼女の表情を見ると、二人の思い出が胸に迫って来て、そこにセブの心中が重なって、彼の奏でる思い出のメロディーが儚く空中を漂って、あまりの切なさに涙を誘われます。
今二人は成功を手にし、幸せです。でも彼/彼女となら、もっと幸せになれたかもしれない。でも夢を叶えることができたのは、あの時の別れがあったから……でも当時の想いが蘇って来て、夢を追っていたあの頃思い描いた理想を想像すると、本気で愛し合った人に想いを馳せてしまう。
でも二人には「現在」がある。
二人は最後に微笑み合って、別れます。そこで物語は幕を閉じるのです。
ただ出会い、ただ別れただけの恋愛ではない。それが『ラ・ラ・ランド』の中で描かれているのです。
おわりに
最後まで読んでいただきありがとうございます。ミュージカルの魅力が詰まった『ラ・ラ・ランド』をぜひ観てください。
まだ観たことがない人はもちろん、一度観た人でも何度でも楽しめる映画です。ミュージカルを映画館の音響で、劇場で観る生の音楽で、ぜひ体感してくださいね!