天才vs天才 わくわくが止まらない! 江戸川乱歩『怪人二十面相』

こんにちは! 物語屋のひっひーです。今回は日本推理小説の祖江戸川乱歩の『怪人二十面相』についてご紹介します。

実は二十面相、僕が自ら読んだ初めての小説なんです。どこでどう読んでいたかというと、国語系の授業中に電子辞書に入っていた『怪人二十面相』をこっそり読んでいました。こらっ!(笑)

とにかく面白いんです。名探偵明智小五郎と稀代の大怪盗二十面相の戦い。嵌めて出し抜かれての繰り返し……ばっちばちです。もう登場人物全員が二十面相に見えてくるほどです。

そんな『怪人二十面相』。実は児童向きに書かれたお話であることはご存知でしたか? 

元々二十面相のタイトルは『怪盗二十面相』だったそうです。ですが子供が読む話のタイトルに犯罪を思わせる単語を使うべきではないということで、怪盗が怪人と変更になったそうです。へえー! 知らなかった!

ですがこれで知ることができました。僕が何を言いたいかというと、二十面相は親子で楽しめる大エンタメだということです! お子さんのおられる方は、早速『怪人二十面相』を手に取ってください!


あらすじ

日本にはかつて正義と悪2人の天才がいた――!

大物実業家・羽柴壮太郎に届いた一通の予告状。差出人の名は「二十面相」。羽柴の健闘もむなしく、家宝のダイヤモンドは思いもよらぬ華麗な手法で目の前から姿を消してしまう。勇敢な少年探偵、小林の活躍で何とか取り戻せたものの、肝心の二十面相はいまだ野放し。そのときまるで運命に導かれるように、一人の大探偵が東京駅に降り立った。劇的トリックの空中戦、ここに始まる!

これは僕の読んだ新潮社の『怪人二十面相』の裏表紙に掲載されているあらすじです。もうわくわくしてきますよね!

天才と天才の戦い。名探偵と怪盗。トリックの空中戦! 何だこのロマンの詰め合わせは! 大人も子供も楽しめる、大傑作エンターテインメント作品です!

明智と二十面相の頭脳戦

とにかく騙されます。すべてを疑ってかからないと、あなたも二十面相に出し抜かれるでしょう。

まず最初の対決。それはあらすじにもある通り、大物実業家・羽柴壮太郎の所有する、ロマノフ王家の宝冠を装飾していたダイヤモンドを奪うという二十面相からの予告状が届きます。

予告通り二十面相は思いもよらぬ手法でそのダイヤモンドを盗み出してしまいますが、この時逃げ去ろうとした二十面相は羽柴家の次男・壮二君が仕掛けた罠に掛かり、怪我を負います。その復讐として二十面相は壮二君を誘拐し、身代金として羽柴家の別の美術品を要求します。

その美術品を二十面相の手下が取りに来るのですが、二十面相からの手紙には警察には知らせるなとあります。そこで羽柴壮太郎は「警察がだめでも私立探偵なら……」と、警察で匙を投げた事件をいくつも解決している名探偵・明智小五郎に頼ることにしたのです。

が、明智は現在満州に出張中。時代ですねえ(笑)代わりに助手の小林芳雄が出向くことになりました。ここに明智対二十面相の戦いは切って落とされることになるのです。

ここからはまさに見どころなので実際に小説を読んでもらうとして、二度目の対決です。

今度は美術城と呼ばれる伊豆の大豪邸に住む日下部老人の元に二十面相の予告状が届きます。日下部老人は超のつくほどの美術収集家で、小学校の国史の本に名前が載っている古来の大名人の作は殆ど漏れなく持っているという人物でした。老人はそれら美術品を命よりも大事がっていたのです。

これは老人にとっては一大事です。

そんな時、老人は伊豆日報に書かれた記事を思い出します。そこには明智小五郎が満州への出張から帰還し、旅疲れを取るために伊豆に療養に来ていると書かれていたのです。日下部老人は天が自分を見捨てなかったと思い、飛びつきます。そして明智に警護を依頼するのですが……。

何と二十面相は、見事に美術城の美術品をすべて盗み出したのでした。ええー! どうやってー? それはぜひ、小説を読んでみてください。

そして三度目、明智と二十面相は遂に正面衝突します。その経緯や展開は触れすぎるとネタバレになってしまうので詳しくは紹介できませんが、正真正銘最終決戦です! ここからはド迫力アクション。物語はいよいよ最高潮に達します!

果たして二十面相を捕縛できるのか! ハラハラドキドキしながら結末を見届けてください!

コナン好きにはたまらない。元ネタだらけの『怪人二十面相』

漫画『名探偵コナン』は現在物凄い人気を誇っていますよね。皆さんの中にもコナン・ファンは多いのではと想像します。その『名探偵コナン』、漫画だけ読んでマニアだのオタクだの語っていませんか? コナンを語るなら『怪人二十面相』は必読です。

え!? コナンはホームズでしょ?

もちろん。コナン(新一)はシャーロック・ホームズオタクです。ですが『名探偵コナン』に色濃く反映されているのが、実は『怪人二十面相』なんです。

まずは江戸川コナンという名前です。これはコナンが幼馴染の蘭に名前を訊かれて咄嗟に名乗ったものですが、その名前が思いついたのは工藤家の本棚に所蔵されている本の背表紙を見た時です。その時偶然にも隣あって収納されていたのが、

江戸川乱歩全集とコナン・ドイル全集だったわけです。江戸川乱歩……そう、『怪人二十面相』の作者ですよね! コナン・ドイルとはシャーロック・ホームズシリーズを書いた推理小説家です。

主人公の名前の由来になった江戸川乱歩の影響を受けていないわけがない! ですよね。まあ、青山剛昌さん自身も公言されているかもしれませんが、キャラクターの名前の付け方にもホームズ、あるいは乱歩作品が由来になっています。

たとえば蘭の父親・毛利小五郎。毛利とはホームズの宿敵モリアーティーが由来となっています。小五郎とは、もうみなさんおわかりですよね! そう、明智小五郎が由来となっているのです!

では二十面相はどこに影響を及ぼしているのか……。『名探偵コナン』の中でも屈指の人気を誇る怪盗キッドです。二十面相は超人的な変装技術を持ち、それによって巧みに宝物を盗み出します。キッドも変装の名人ですよね。

それに何より、予告状です。二十面相は必ず予告状を送り付けた後、盗み出しています。怪盗キッドも予告状を送りつけますよね。そうなんです。怪盗キッドは二十面相だったんです。

もう『怪人二十面相』を読みたくなってきましたよね! これだけではありません。

コナンといえば、同じクラスの友達で結成された少年探偵団という設定がありますが、実はこれも『怪人二十面相』に登場します。それどころか、二十面相の続編のタイトルは何と『少年探偵団』なんです。

その少年探偵団のリーダーが明智の助手、小林芳雄なんです。小林芳雄は大人ではなくかわいらしい少年なんです! 言ってみれば、小林君がコナンです。毛利小五郎が明智小五郎とは言いませんが、『名探偵コナン』という世界観の中でいえば、まさに毛利とコナン=明智と小林なんです。

そしてコナン同様、『怪人二十面相』の中でも少年探偵団は大活躍します。

これだけの共通点――コナンのベースなった設定が『怪人二十面相』、江戸川乱歩作品には存在します。これまで読んでいなかったコナン・ファンの皆さん。これを機会に江戸川乱歩を読みましょう。もしかすると、まだまだ『名探偵コナン』のベースとなっている設定が見つかるかもしれません。

江戸川乱歩読まずしてコナン・ファンは名乗れません!(そういう僕はあまりコナンを詳しくありませんが(笑))


おわりに

最後までご覧いただきありがとうございました! 江戸川乱歩は日本の推理小説の祖として、現在に至るまで多大な影響を与えた作家です。『怪人二十面相』だけでなく、様々な名作を残しています。ぜひそちらも手に取ってもらえればと思います。

今回ご紹介した『怪人二十面相』。続編があります。

明智小五郎、こちらは二十面相シリーズだけでなく様々な乱歩小説に登場します。『怪人二十面相』ではその天才的な頭脳が全面に出ていてスマートでかっこいいですが、別の作品では明智の人間らしさ、だらしなさ、人柄が滲み出たものもあるので、明智小五郎事件簿を読んでみるのもおすすめします!



返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です