こんにちは! 物語屋のひっひーです。今回はオペラ鑑賞について書きたいと思います。
オペラって堅苦しそう……ミーハーな自分が行ったらブルジョワジーな紳士淑女に白い目で見られるんじゃないか……劇場にはキンピカなドレスで行かないといけないのかしら……結論、そんなことはありません!
オペラというと堅苦しいイメージだったり敷居が高く感じられたり、とにかく自分とは縁遠い世界のように思いますよね。僕もそうでした。ですがまったくそんなことはありません!
そんな細かいことを気にしてオペラを観に行かないなんて損しかありません。
面白いストーリー、素晴らしい音楽、目を瞠る舞台芸術、気負うことなく、人類が誇る総合芸術を体感しましょう!
オペラとは
オペラ発祥の地はイタリアです。「え、イタリア?」と思われる方もおられるかと思います。それもそうでしょう。現在、「音楽の都」と呼ばれているのはオーストリア・ウィーンですよね。ですがウィーンが音楽の都と呼ばれるのはモーツァルトやベートーヴェンをはじめとする大作曲家を生んだからで、オペラはそこにあまり関わっていません。
ですがオペラ好きの方々からすればオペラといえばイタリア、あるいはドイツというイメージです。オーストリアもドイツ語圏なので広い目で見るとそこに入りますが……。
何といっても現代に続くオペラ史を見ても、大家として名前が上がるのはイタリアの作曲家です。ヴェルディとプッチーニ。それに続いて楽劇王と呼ばれるドイツの作曲家ワーグナーが上がるでしょうか。モーツァルトも多くのオペラを書いていますが、上演頻度で言えばヴェルディ、プッチーニ、そしてワーグナーがトップを占めるでしょう。
「オペラ」はイタリア語で「作品」を意味する言葉だそうです。文学、音楽、演劇、美術、建築……そうしたあらゆるジャンルがすべて詰め込まれているのがオペラであり、まさに総合芸術です。数百年前にオペラという「作品」を意味する言葉がつけられたのも納得です。
オペラといえば悲劇が多いイメージ……。その通りです! もちろん喜劇もありますが、圧倒的に悲劇が多いです。なぜか、それはオペラの起源と発展の歴史が関係してきます。とはいえ難しい話をするつもりはないのでさくっとさらっておきましょう。
現存する最古のオペラは1600年に上演されたヤコボ・ペリー作曲の『エウリディーチェ』と言われています。このオペラはフィレンツェで行われた国王の結婚式で上演されたそうです。そうした背景もあり、オペラは王族貴族のために作られていきます。
題材として多いのが神話や伝承を基にした英雄譚。暴君の破滅を描いた教訓を得るオペラ。特に中世ヨーロッパでは悲劇作品こそ最高位の物語と捉えられていたので、貴族は自分の威厳を示すために作曲家に悲劇オペラを書かせたのです。
その後ベートーヴェンの登場で音楽家は宮廷や貴族から自立していき、自由な創作をするようになりますが、やはり歴史の名残もあったのでしょう。それ以降もオペラは悲劇的なものが多く書かれました。
この後オペラは庶民向けのオペレッタ、現代ではオペラ以上の人気があるミュージカルと様々な形に変わっていき、ハッピーエンドの物語も多く作られるようになりました。
そうした歴史背景もあり、多くの方は無意識のうちにオペラはお堅いものだと思い込んでいるのではないでしょうか。
チケット購入
オペラを観に行ってみたいけど、チケットはどうやって買うの?
チケットは各劇場のホームページから購入することができます。会員登録はもちろん無料です。
僕が登録しているのは新国立劇場とびわ湖ホールですが、この二つとも、登録時のIDとパスワードがあればチケットを購入できます。購入したチケットはクレジット決済もできますし、コンビニ支払いも可能です。郵送でチケットを送ってもらうこともできれば、当日劇場で発券することもできます。
オペラを観てみたいと思う方は、まず近くのオペラ劇場の会員登録をしましょう!
オペラ鑑賞時のマナー
オペラはマナーが多そう……。観に行きたいけど、恥をかくのは嫌!
そんなあなたに朗報です。オペラにマナーというマナーはありません。強いて言えば、行儀よく観劇しましょう。とはいえ映画やミュージカルを観る感覚でいいのです。
ドレスコード? そんなものはありません。オペラと聞いて連想するように、タキシードやドレス、和装で観劇に来ているお客さんもちらほらおられますが、むしろそうした方のほうが少数派です。オペラといったらタキシード、ドレス! いやいつの時代やねんって感じです。
そういう僕はどんな格好でオペラを観に行くのか。季節にもよります。春秋ならジャケットを着て行ったりもしますが、カジュアルな感じです。夏に観劇に行く時はTシャツ一枚……。
本当にそのくらいで大丈夫です。パジャマで行くのはおすすめしませんけどね。(笑)
ですが本当にラフな格好で大丈夫です。
聴きどころがわからないので拍手のタイミングがわかりません! 大丈夫です。拍手や「ブラボー」は周りに流されてやるものではありません。本当に感動した時だけ送ればいいんです。それに玄人でも初心者でも、感動するシーンは殆ど同じです。
不安なら、他のお客さんが拍手を送る時に少し遅れて拍手をしましょう!
幕間は近世の社交界みたいにワイン片手に他の聴衆とおしゃべり? そんな必要はありません。入場時に渡されるパンフレットを読んでおけばいいのです。トイレに行くために客席を立って、ホワイエに出てスマホゲームをする。時間になったら客席に戻る。僕はいつもそうしています。
でもやっぱり不安……。そもそも年齢層は?
確かに年齢層は高いです。ですが若者もいなくはないんです。僕も二十代ですが、全然一人で観に行きます。僕以外にも同年代の方を見掛けることは多いです。だから何も心配いりません。
チケットを買って劇場に行く。それだけでオペラは観られるのですから。
初心者にもおすすめオペラ5選
さあ、劇場に足を運ぶ覚悟はできましたね? いよいよオペラ鑑賞です。ここでは本当に簡単に、おすすめのオペラを紹介します。正直僕的には5選では足りないんですが、まだまだあるオペラ作品は、皆さんに観に行ってもらって、いつか僕と語り合いましょう!
・トスカ
数あるオペラの中でも群を抜いて面白いのがプッチーニ作曲『トスカ』です。十七世紀末、恐怖政治の敷かれるローマが舞台です。
ある日、画家のマリオ・カヴァラドッシが教会の壁画を描いているところに政治犯として囚われている親友アンジェロッティが脱獄してきます。友との再会を喜ぶのも束の間、そこにカヴァラドッシの恋人トスカがやって来ます。恋人とはいえ親友の脱獄を知らせるわけにはいきません。カヴァラドッシはアンジェロッティを匿います。
挙動のおかしな恋人に浮気を疑うトスカ……。今夜の約束をしてトスカが帰ると、カヴァラドッシもアンジェロッティを逃がすため教会を出ます。そこへ大悪役・欲深い警視総監スカルピアが来て、政治犯と画家の関係を見抜きます。さらにスカルピアは、トスカに対して下心を抱いています。
スカルピアはトスカを手に入れるため、カヴァラドッシを利用します。カヴァラドッシを連行し、アンジェロッティの居場所を吐かせるため拷問にかけます。カヴァラドッシは親友を守るために絶対に口は割りません。ところが恋人の悲鳴を聞かされたトスカは耐え切れずアンジェロッティの居場所をスカルピアに明かしてしまいます。
カヴァラドッシは拷問から解放されますが、口を割ったトスカを恨みます。
トスカは放免となるカヴァラドッシと国外に逃亡するためスカルピアに通行証を書かせます。スカルピアは通行証をトスカに渡す前にその肉体にありつこうとしますが、その瞬間トスカは手に持っていたナイフでスカルピアを刺し殺します。「これがトスカの接吻よ!」と叫びながら。
そして物語は悲劇へと向かって行くのです……。名曲揃いでもある『トスカ』必見です!
・椿姫
オペラといったら『椿姫』。『椿姫』といえばオペラ。そのくらい、タイトルは有名ですよね! こちらはヴェルディ作曲の名オペラです。舞台は十九世紀パリ。主人公ヴィオレッタは高級娼婦という物語です。オペラが制作された当時は、オペラとしては異例の現代劇でした。
パリのサロン。高級娼婦ヴィオレッタはパリの花形娼婦でした。まさにスター、当時の高級娼婦はハリウッド・スターのような扱いです。子爵や男爵が集まる中、ヴィオレッタに想いを寄せる若者アルフレードがいます。
皆に煽てられヴィオレッタへの想いを熱く語るアルフレード。初めはヴィオレッタにあしらわれますが、ヴィオレッタは次第にアルフレードの一途な純情さに惹かれていきます。ヴィオレッタは持っていた椿の花をアルフレードに渡し、明日の再会を約束します。
ところがヴィオレッタの体は病に蝕まれていたのです。当時はまだ不治の病だった結核です。そんなことを知らないアルフレードはヴィオレッタと田舎での二人暮らしを始めますが、息子が娼婦と暮らしていることを知ったアルフレードの父親が二人の仲を認めず、さらには同居生活で二人はすれ違っていきます。
さらにヴィオレッタの病状は進行していき……。二人は別れますが、後に再会します。ただ、その時ヴィオレッタは死の床についていて……。
娼婦のイメージからは予想もできないほどの純愛劇。甘く切ない、そして儚い愛の物語――。一幕冒頭の「乾杯の歌」は必ずどこかで耳にしたことがあるほど有名な曲です! ヴィオレッタが息絶えるラストは涙なしに見れません!
・カルメン
オペラは縁遠くても、「カルメン」という名はどこかで聞いたことがある。そんな人も多いのではないでしょうか。なぜならカルメンは魔性の女の代名詞にもなっているからです!
舞台はスペイン、セビリア。煙草工場から出て来た女工の中に一際美しい女性がいます。カルメンです。カルメンは竜騎兵として町の警護に当たるホセを誘惑します。ホセはカルメンに惚れてしまい、その後女工同士の喧嘩で逮捕されたカルメンを独断で逃がしてしまいます。
ホセは咎められ、牢屋に入れられます。牢屋を出たホセはカルメンに会いに行き、一時歓迎されますが、帰営のラッパを聞き隊に戻ろうとしたところカルメンと喧嘩になります。ホセはカルメンへの愛を語りますが、そこにホセの上司がやって来て大喧嘩。上司を殴りつけたホセは帰営せず、カルメンのいる密輸団に加わることになります。
しかしホセの母親が危篤となり、幼馴染で許嫁のミカエラがホセを連れ戻しにやって来ます。ホセはなくなくカルメンの元を離れますが、この時、すでにカルメンは花形闘牛士エスカミーリョに心が移りつつありました。「また戻って来るからな!」と捨て台詞を吐いたホセ……。
ホセが戻って来た時、カルメンはすっかり心変わりしていて……。
美しくも激しい『カルメン』。それを見事に音楽で表したビゼーの最高傑作! 必見です!
・フィガロの結婚
神童モーツァルトも数々のオペラを残しています。モーツァルトが神童と呼ばれる所以――それは音楽のすべてのジャンルで超名作を生みだしたからなんです! 交響曲、協奏曲、独奏曲……上げればクラシック音楽のジャンルはキリがありません。そのすべてで名曲を生み出したのです。その中にはオペラも数えられます。『魔笛』『ドン・ジョバンニ』……誰もが知る名作オペラです。
その中でも初心者におすすめなのが『フィガロの結婚』です。
伯爵の従僕フィガロと伯爵夫人の侍女スザンナが結婚式を挙げる日、廃止されていた初夜権を復活させようと企んでいることを知り、フィガロは不安に駆られます。そこに女中頭のマルチェリーナがやって来て、フィガロが借金を返済できない時は自分と結婚するという証文を持っていると言います。マルチェリーナはフィガロに想いを寄せているのです。
それを知ったスザンナとマルチェリーナの言い争い……スザンナを狙う伯爵とフィガロのやり合い……とにかく愛憎愛憎愛憎。ここでは書き切れないくらいです。そして物語は、伯爵を嵌めるためにある計画を練っていくという展開に。
モーツァルトの愉快な音楽に彩られた痛快喜劇オペラです。悲劇やだなあと思う方は神童の痛快オペラを楽しんでください! きっとオペラへのハードルも下がることでしょう。もちろん、名曲揃いです!
・こうもり
最後はオペレッタと呼ばれる、オペラだけど親しみやすいオペラです。そして喜劇です。
ヨハン・シュトラウス二世が書いた傑作オペラ。とにかく勘違いすり替わりでごたごたの大騒動なんです。
主人公は役人を侮辱した罪で今夜刑務所に入る銀行家アイゼンシュタイン。そのアイゼンシュタインを「こうもり博士」と呼ばれるファルケが公爵の夜会へと連れ出します。その間アイゼンシュタインの家に上がり込んでいた小間使いが、刑務所長フランクに主人と間違われて投獄されます。そんなことある? ですよね(笑)
これだけでは終わりません。
夜会にはアイゼンシュタインの妻ロザリンデがハンガリーの貴婦人として仮面をつけて登場します。アイゼンシュタインは妻とも知らずに貴婦人を口説きます。超滑稽ですよね(笑)
そして物語はクライマックスへ。
アイゼンシュタインはすでに自分が牢屋に入れられていると知り、弁護士になりすましてその真相を探ることに。ロザリンデは夫のいない間に夫の浮気について弁護士に相談します。ところがその話を持ち掛けた相手が弁護士になりすましたアイゼンシュタイン……。二人はお互いの浮気を罵り合います。
そこに夜会の出席者が勢揃いし、お互いの正体を知った後、すべてシャンパンのせいだと乾杯して幕が下ります。
愉快なだけでなく、聴きどころも多い名作オペラ。モーツァルトとはまた違った魅力のある喜劇です!
おわりに
最後まで読んでいただきありがとうございました! どうでしたか? オペラと聞くと堅苦しいイメージだったかもしれませんが、少し印象が変わったのではないでしょうか。
オペラという文化そのものも、数百年受け継がれる物語、音楽も、意外と親しみやすいものが多いことが伝わったでしょうか。今回の記事を見て、一度観に行ってみようかなと思ってもらえれば幸いです。
観れば観るほど面白い、聴けば聴くほど奥深い。それがオペラです。皆さんもぜひ、自分のナンバーワンオペラを見つけてくださいね!